概 要
歯車の高周波焼入れでは、歯先ばかりが過熱される、歯底まで十分に硬化層が到達しないといった発熱ムラが生じやすく、コイル形状や加熱条件の最適化が品質確保の鍵となります。
本解析例では、材料の透磁率がキュリー点付近で急激に変化する特性を考慮した「磁場・熱連成解析」を用い、温度上昇に伴う磁気特性の変化を計算へ組み込みます。
これにより、過渡的な表皮深さの変化や発熱分布の推移を高精度に再現し、加熱挙動の理解と条件検討をシミュレーションベースで行うことが可能になります。
本事例では、こうした温度依存性のある磁気特性を考慮した解析手法の有効性を、歯車焼入れプロセスを題材にご紹介します。
時間変動する電流を流し、歯車の発熱密度分布及び温度分布を求めます。 比透磁率は温度に依存する(強連成)場合と、依存しない(弱連成)場合について解析を行いました。
図1に解析対象を示します。

図1.概要図
解析モジュール : PHOTO – EDDYjω & THERMO
本モジュールは発熱ファイルを介さず自動で解析することができます。
図2、図3に解析で使用したメッシュデータを示します。

図2.メッシュ図 全体

図3.メッシュ図 解析対象
解析条件
1.磁場解析(PHOTO-EDDYjω)
○電気・磁気特性
| 空気 | 比透磁率 |
1.0
|
電気伝導率 |
0.0[S/m]
|
|---|---|---|---|---|
| コイル | 比透磁率 |
1.0
|
電気伝導率 |
0.0[S/m]
|
| 金属 | 比透磁率 |
温度依存(下図)
|
電気伝導率 |
5.0×106[S/m]
|

図4.比透磁率の温度依存性
※1仮想的な物性値としています。
○入力条件
| 電流値 |
2000[A]
|
| 周波数 |
100[kHz]
|
2.熱伝導解析(PHOTO-THERMO)
○熱特性
空気、コイル
| 熱伝導率 |
0.0256[W/mK]
|
| 比熱 |
1000[J/kgK]
|
| 質量密度 |
1.161[kg/m3]
|
金属
| 熱伝導率 |
50[W/mK]
|
| 比熱 |
461[J/kgK]
|
| 質量密度 |
7800[kg/m3]
|
○入力条件
| 発熱温度 |
磁場解析の結果を使用
|
| 時刻ステップ |
5.0秒間(0.25秒ピッチ、20ステップ)
|
解析結果

図5.磁束密度(a)実部[T]
図6.磁束密度(b)虚部[T]

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図7.発熱密度分布(a) 温度依存性あり(強連成)[W/m3]

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図8.発熱密度分布(b) 温度依存性なし(弱連成)[W/m3]※1
※1:最初に計算された発熱密度が最終ステップまで使用されます。
![発熱量[W]の時間変化](https://photon-cae.co.jp/analysis_img/yudo/img/3-3.jpg)
図9.発熱量[W]の時間変化
※1:1ステップ目のみ発熱を計算※2:温度による物性値の変化が生じたときに発熱を計算
各ステップで使用されている発熱量がプロットされています。毎ステップにおいて発熱が計算されているわけではありません。

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図10.温度分布(a) 温度依存性あり(強連成)[℃]

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図11.温度分布(b) 温度依存性なし(弱連成)[℃]
解析ソフト導入・受託解析のご相談
高周波焼入れでは、材料の透磁率がキュリー点付近で大きく変化するため、発熱分布や表皮深さの推移を正しく把握することが、加熱条件の検討において極めて重要です。
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