電磁気あれこれ 10.BとH

 1.磁束密度と磁場
ミクロとマクロの話をしたときに、磁性体内部においてはマクロな磁束密度Bがミクロな磁束密度bの平均であり、マクロな磁場Hはミクロな磁場hの平均ではないこと、
を示しました。すなわちマクロな磁場は磁性体の磁化に関係した量であり、ミクロな磁場の単純な平均ではないということです。
今回は磁性体を磁気双極子の集まりとみなしミクロな磁束密度の平均がマクロな磁束密度になることを具体的に確かめ、マクロな磁場がミクロな磁場や磁束密度とどのような関係にあるかを調べたいと思います。

 2.磁性体の磁気双極子モデル
無限に長いソレノイドコイル内の磁性体内部の磁場について考えます。このコイルの中心線がz 軸と一致するように座標系を決めます。コイル断面はz 座標がどこでも同じ形状で面積S とし、コイルには単位長さあたりI の電流が流れているものとします。
このときコイル内の磁性体には、
の磁場ができます。ここでは磁場の向きは下から上とします。
磁性体を磁気双極子の集まりとしてモデル化します。磁気双極子としては環状電流が流れている円柱状の剛体を考えます。円柱は全て同じ形状であり円の面積s 高さh 、円柱の側面に大きさi の環状電流が一様に流れているものとします。また、これらの円柱はすべて単位体積あたりn 個あり、中心位置は固定されているが自由に回転できるようになっているとします。
ここに上の磁場がかかるとこれらの円柱の方向は全てそろい上面にN極下面にS極となりこれらの側面電流の作る磁束密度によってミクロな磁束密度が決定されます。
この磁束密度は磁気双極子の付近でいろいろな方向を向きますが平均するとz 成分しかもたないことはすぐ分かります。そこでこの磁場のz 成分をh とかき次のようにして単位長さあたりの平均をとります。
この積分内のz 方向の積分路は円柱の中も通過します。この磁気双極子は単位体積あたりn 個ありますので平均するとns 個の円柱内を通ることになります。したがって円柱側面の電流を考慮するとこの積分は次のようになります。
単位体積あたりの磁気双極子の磁気モーメントをM とすれば、
となりますので、(2−2)式の積分は次のようになります。
この式はミクロな磁束密度を使って次のようにかきなおすことができます。
これからミクロな磁束密度の平均がマクロな磁束蜜度と一致していることが確認できました。
それではマクロな磁場H は何に対応するのでしょうか。(2−2)式のz 方向の積分路を少し変形させて磁気双極子の円柱内部にはいらないように迂回するようにすれば、
となります。ここで積分路C はほとんどがz 方向であるが円柱にはいらないように円柱底面から側面に迂回し、上面で再び元のz 方向の積分路に戻るものを考えます。したがって積分路がz 方向とは限らないので積分は線積分としています。
ここで電気双極子の場合と同様に磁気双極子が単位体積中に占める割合nsh が非常に小さいとしますとこのう回路部分の積分は無視できるほど小さくなります。
したがってこの線積分は磁気双極子外部だけを積分したものとなりこの積分を使うと(2−2)式の平均は磁気双極子外部の平均となり、
となります。
今回磁性体を磁気双極子の集まりとしてモデル化してミクロな磁束密度とマクロな磁場や磁束密度との関係を見てきましたが、結果をまとめますと次のようになります。

(1)ミクロな磁束密度の平均がマクロな磁束密度である。
(2)ミクロな磁場を磁気双極子外部だけで平均したものがマクロな磁場である。

つまり磁束密度B と磁場H との違いは、ミクロな磁束密度の平均のとり方による違いということになります。