電磁気あれこれ 8.物質と電磁場

 1.物質と電磁場の表現
マクロな電磁場を表現するために4種類の場があります。すなわち、電場Eと電束密度D、磁束密度Bと磁場Hでありそれぞれ次の関係があります。
ここに、分極ベクトルP 、磁化ベクトルM、真空の誘電率と透磁率ε0μ0です。
これらの場の間には物質中のマックスウェルの方程式、
が成り立っています。この方程式を見ると4種類の場以外に、電流密度J、電荷密度ρがあります。つまりこの方程式では電流と電荷以外は全て場として表現されていることが分かります。
このような表現は誘電体や磁性体などを真空と同じく電磁場の媒体であるという考え方に基づいたものです。真空の誘電率や透磁率という表現もこのような考えによる名称であると思われます。
ここでは誘電体や磁性体のもつ分極や磁化を物質の属性として、場とは区別して表現したいと思います。そこで、(1−1)式を使って方程式をかきかえると次のようになります。
これらの方程式では左辺に場の量、右辺に物質に関する量をもってきており、場に関してはE Bだけが使われています。
同様に(1−1)式を使うと次のようにE Hを使った表現でかくこともできます。
これらの方程式は表現を変えているだけなのでもちろん(1−2)式と同じ方程式です。しかしこれらの方程式を使って次に述べるような保存則を導いた場合、その物理的な意味が異なってきます。

 2.エネルギー保存則の異なった表現
ここで次のベクトル場に関する恒等式を考えます。
このベクトルFに電場E、ベクトルGに磁束密度を真空の透磁率でわったB0を代入すると次のようになります。
(1−3)式を使って右辺を変形すれば、
となるので次の関係式が得られます。
次に、ベクトルにF G 電場E 磁場H を代入すると次のようになります。
この右辺を(1−4)式を使って変形すれば、
となるので次の関係式が得られます。
(2−2)式と(2−3)式は表現はちがっていますがどちらも物質中のマックスウェル方程式から導かれたものなので正しい式です。
これらの式は次の形の保存則をあらわしています。
(2−2)式の場合、この式にあらわれる量をU 1W 1p 1とかくと、
(2−3)式の場合、これらに対応する量をU 2W 2p 2とかくと、
となります。
これらの量をみると、U は電磁場が単位体積中にもつエネルギー、W は電磁場が単位時間に物質に与えるエネルギー、pは単位面積あたりを通過する電磁場のエネルギーをあらわしているように思われます。この場合(2−4)式はエネルギー保存則となります。
問題はエネルギー保存則にこのような二つの表現が存在することです。これらの量が(2−4)式のような保存則をみたしていることは間違いないのですがここでいったような解釈ができるかどうかはまた別の話です。
そこでこれらの量にどのような物理的意味を待たすことができるかを調べたいと思います。

 3.無限長ソレノイドと磁石
z 方向に無限に長いソレノイドコイルを考えます。ソレノイドの断面は一辺の長さa がの正方形であり、頂点の座標をx y 平面で(0,0)(a,0)(a,a)(0,a)とし、z 方向の単位長さ当たりに流れる電流をI とします。
このときソレノイド内の磁場と磁束密度は、
となります。
ここでこのソレノイドが一様なy 方向の電場E の中に置かれているとします。(2−5)式と(2−6)式では次のようにソレノイド内でx 方向のエネルギーの流れができることになります。
この場合はどちらも同じ結果になっています。電流はコイルを上からみて右側(x = a)では電場からz 方向に単位長さあたりaEI のエネルギーをもらい、このエネルギーを左側(x = 0)まで運びそこでaEI のエネルギーを電場に与えるという循環が出来ておりどちらもエネルギー保存則をあらわしていると考えることが出来ます。
それではこのソレノイドコイルのかわりに無限に長い磁石を置いた場合はどうでしょうか。
磁石の断面はソレノイドと同じく一辺がa の正方形とし、z 方向に一様な磁化I を持っているものとます。このときこの磁石のなかの磁束密度と磁場は次のようになります。
この磁石がソレノイドのときと同様に一様なy 方向の電場E の中に置かれているとします。このときこの磁石内で(2−5)式と(2−6)式では次のようなx 方向のエネルギーの流れができることになります。
明らかに両者は異なった結果となります。どう考えたらよいのでしょうか。
ソレノイドコイルの場合左から右へと運ばれたエネルギーは、電流に与えられて左側に還流していました。磁石の場合これにあたる機構はあるのでしょうか。
ここで、(2−5)式をみるとWを表す式の中に不思議な項があることに気づきます。
これは磁石を電場の中に置くと電場が磁化にエネルギーを与えることを示しています。磁石の磁化は電場の中においても変化しませんのでこれにより発熱や吸熱がおこることになりますが現実にはそのようなことはありません。したがって(2−5)式をエネルギー保存則に対応させて考えるには無理があるように思われます。
そこでこの項を次のように変形します。

ただし最後の変形には(1−3)式を使っています。これより(2−2)式の右辺は、

となるので、(2−2)式は次のようになります。
ただし、磁場Hは(1−1)式によって磁束密度Bで表現されたものです。
これより、(2−4)式のかたちにかけば、式にあらわれる量をU 3W 3p 3とかくと、

となります。ここでU 3は前回のU 1となりますが、電磁エネルギーの流れp3p2と一致しており先ほどの磁石内のエネルギーの流れについても不自然なものは出てきません。
それでは電磁場のエネルギーに関する表現としては(2−6)式と(3−6)式ではどちらが正しいのでしょうか。これについては荒っぽい言い方をすればどちらでも良いように思われます。つまり電磁場の変数としてE Bを使っているときは(3−6)の定義が便利であるし、E Hを使っている場合は(2−6)式の定義が便利ということです。