電磁気学入門 10. 静的な電磁場

前回マックスウェルの方程式を電磁ポテンシャルで表しましたので、ここではこれを具体的に解きます。ただし、静的な電磁場に話を限定します。
静的な電磁場の場合、クーロンゲージでもローレンツゲージでもマックスウェルの方程式は次のようになります。
これらの方程式を無限遠で電磁ポテンシャルΦがゼロとなる境界条件のもとに解きます。 この(1)式は次の、ポアッソンの方程式の形をしています。
また(2)式も各成分を独立したスカラー関数と考えればこの形の方程式です。
ここで次の方程式をみたすグリーン関数G(,')を考えます。
ただし、
はディラックのデルタ関数です。これより(3)式の解は全領域の体積積分として
とかけます。この式を(4)式と部分積分を使って変形すると次のようになります。
ただし右辺のSによる積分は無限遠境界面上の面積分で、 nはこの境界面状の法線方向の微分ですが、これらの積分はゼロとなります。したがってこの式に(3)式を代入すると次の式が得られます。
(4)式をみたすグリーン関数は、
ですが、これは点電荷の作る電場がクーロンの法則に従うことから推測できます。 これより、(1)、(2)式の解が次のようになります。
ただし、
です。
さきほどグリーン関数が(6)式になることをいいましたが、実際原点に電荷qをもつ点電荷をおいた場合は、
となるので、(7)式は次のようになります。
これより電場は、
となりクーロンの法則が得られます。
次に電流の作る磁場を求めます。(8)式より、
ですので、磁束密度は、
となります。電流iの線電流の場合この式は、
と線素dlの線積分で表されますが、これはビオ・サバールの法則です。 最後に磁化の作る磁場を求めます。(8)式より、
となります。これより磁束密度は次のようになります。
ただし添字pのついた微分演算子はpによる微分を表しています。この式の被積分関数を成分で書き、変形すると次のようになります。
これを上式に代入し積分境界面で磁化がゼロであることに注意すれば
となります。ここで(4)、(6)式の関係、
を使うとこの式は次のようになります。
これより磁場の強さは、
となりますが、右辺の積分のなかの微分をpに置き換えて積分の外に出し少しかきかえると、
となります。この式を(7)式と比較すると、右辺カッコの中がスカラーポテンシャルに対応して磁気的なポテンシャルと考えることができます。また、磁化が分極に対応し、あたかも磁荷密度、
が磁場を作っているような形をしています。しかし注意しないといけないのは、(7)式では電荷ρや、分極電荷−divが直接電場を作っているのに対して、(13)式は磁場を発生させる磁性体全体を含む領域で積分してはじめて意味があるということです。すなわち、電荷や分極電荷の場合それぞれの場所が独立に電場の発生に寄与しているのに対し、磁荷の場合は場所ごとの寄与を独立に考えることはできません。電場と同じように場所ごとの寄与を考えるには(8)式の磁化電流を考える必要があります。