静磁場解析 測定データからプラスチック磁石内の磁化分布を予測(逆問題)

概 要

磁石やコイルが作る磁場を解析する場合を順問題と言います。

一方で、磁場分布から磁化や電流を求める問題を逆問題と言います。

測定データを使って、逆問題により推定された磁化や電流密度から異なる位置での磁場分布を計算することができます。



一般的な磁場解析では磁化や電流密度を与えることによって、ある位置における磁束密度を解析することができます。(順問題)

逆問題が可能であれば、予め実験によって測定された磁束密度データから、磁石内部に存在する磁化分布を推定し、 測定位置とは異なる場所の磁束密度を計算することできます。

これは初期条件として、磁化や電流密度を与えることなく、解析できることになります。

今回は、プラスチック磁石表面の磁束密度の数値データから、磁石内部の磁化を推定し、 その磁化が作る磁束密度を解析する事例(逆問題)をご紹介致します。

便宜的に、順問題によって得られた磁束密度から磁化を推定し、別の位置における磁束密度を計算します。

順問題の結果を使用しますので、順問題と逆問題の解析結果を比較し、逆問題の解析機能の妥当性を評価できます。


解析結果

●順問題

初めに図1−2に示すような磁化分布の磁石が作る磁束密度を解析します(順問題)。

磁石表面から1mm離れた位置における磁束密度を計算します。

磁石及び計算点のメッシュ分割を図1−1に示します。


           図1−1.磁石の要素分割と計算点



             図1−2.磁石内部の磁化分布[A/m]



     図1−3.磁石の表面から1mm離れた位置における磁束密度分布[T]


●逆問題

次に先の順問題で得られた磁石表面から1mm離れた位置における磁束密度の結果(図1−3)から磁化分布を推定し、 同じ位置における磁束密度を再現します。


            図2−1.推定された磁化分布[A/m]
  


     図2−2.磁石の表面から1mm離れた位置における磁束密度分布[T]


磁化分布を推定するために使用した磁束密度(図1−3.順問題)と推定された磁化分布から計算された 磁束密度(図2−2.逆問題)の動径方向成分について着目したグラフを図2−3に示します。



     図2−3.動径方向の磁束密度比較(逆問題と順問題)


良好な結果を示していることがわかります。

ここで、順問題と逆問題で磁石表面から1mm離れた位置における磁束密度は概ね一致していますが、順問題で入力条件としての磁化分布(図1−2) と逆問題で推定された磁化分布(図2−1)が異なります。

つまり、同じ磁束密度を示す磁化分布が複数存在しています。実は磁化分布に任意性が存在していることを意味しています。

しかし、図2−3に示すように、磁石外側の磁束密度を良く再現できていますので、空間の磁束密度を評価したい場合は 磁化分布の一意性は問題ありません。



●さらに

磁石の表面から1mm離れた位置における磁束密度の数値データ(図1−3)を使用して、磁化を推定し、 磁石の表面から10mm離れた位置での磁束密度の結果も示します。



              図3−1.計算点の位置



          図3−2.逆問題から得られた磁束密度分布[T]



    図3−3.磁化を入力条件とした場合の磁束密度分布[T] (順問題、参照用)

図3−2と図3−3の磁束密度の動径方向成分に着目したグラフを図3−4に示します。



     図3−4.順問題と逆問題の動径方向の磁束密度比較


こちらも、良好な結果が得られています。


●おまけ

面白いことに、磁石の要素を極端に粗くしても、良い結果が得られます。


              図4−1.磁石の要素分割



             図4−2.推定された磁化分布[A/m]



  図4−3.逆問題から得られた磁束密度分布[T](図3−3と比較してください)



      図4−4.順問題と逆問題の動径方向の磁束密度比較


●最後に
今回の解析事例では順問題で得られた磁束密度の数値データから磁化分布を推定しましたが、 磁化分布が不明で測定データのみ入手できる場合にこの逆問題による手法が有効です。

また逆問題で推定された磁化分布を持つ磁石をモータのロータに組み込んで、解析することも可能となります。