電磁波解析 近傍場のデータから遠方場の推測

解析の概要

電波暗室の3メートル法で計測した電場のデータから、10メートル法での電場分布を推測します。
3メートル法の電場の計測点を、図1の左図に示します。計測点は波源を中心とした半径3m、 高さ3mの円筒面上にあり、周方向に5度間隔、高さ方向に10cm間隔で合計2232点です。 10メートル法の電場の計算点は図1の右図のように、半径10m、高さ3mの円筒面上にあり、 3メートル法と同じく合計2232点で評価しました。 今回は検証のために10メートル法でも計測を行い、計算との結果を比較しました。

解析に使用したモジュールはPHOTO-WAVEMPです。

図1 3m法と10m法

解析例1

電波源として試験用のアンテナを用い、周波数が550MHz のときの解析例を示します。

まず3メートル法により計測した電場強度のデータ(*)を、可視化したものを図2に示します。 左側の図が床面に対する水平方向の成分で、右側の図が垂直方向の成分です。

図2 アンテナ3m法計測

次に計測データから多重極モーメントを計算し、3メートル法の電場を近似したときの分布を図3に示します。

図3 アンテナ3m法計算

図2と図3から各成分の電場分布はよく似ていることが確認できます。これは多重極展開によって、計測した電場分布を よく近似できていることを示しています。

次に多重極モーメントから、半径10mの電場分布を推測します。図4に推測した電場分布を示します。

図4 アンテナ10m法計測

検証のため10メートル法によって計測した電場データ(*)を可視化したものを図5に示します。

図5 アンテナ10m法推測

図4と図5を比較すると、特に水平成分は多重極展開によって推測した電場分布が、計測した電場分布と似ていることがわかります。 つまり水平成分は10メートル法による結果を、ある程度正確に推測できていることを示しています。 一方、垂直成分は水平成分ほど正確には推測できていません。これは垂直成分の電場強度が水平成分と比較して一桁ほど小さいため、 多重極モーメントを求める際に垂直成分の寄与が小さいことに加え、相対的にノイズの影響が大きくなっていることも原因の一つとして考えられます。

次に、計測データの水平成分と垂直成分がそれぞれ最大となる場所でのハイトパターンを比較したものを図6に示します。 横軸が高さ方向の座標、縦軸は電場強度をデシベルで表しています。図6の左側の図より水平成分については、 計測と推測でハイトパターンがよく一致しています。垂直成分については、上記の理由により、水平成分ほどは一致していません。

図6 アンテナハイトパターン

(*)計測データのご提供:一般社団法人KEC関西電子工業振興センター様

解析例2

電波源として擬似的な電気機器を用い、周波数が960MHz のときの解析例を示します。

3メートル法により計測した電場強度のデータ(*)を、可視化したものを図7に示します。  試験用のアンテナの場合(図2)と比較して、電場の分布が複雑になっていることがわかります。

図7 擬似EUT3m法計測

次に計測データから多重極モーメントを計算し、3メートル法の電場を近似したときの分布を図8に示します。

図8 擬似EUT3m法計算

次に多重極モーメントから、半径10mの電場分布を推測します。図9に推測した電場分布を示します。

図9 擬似EUT10m法計測

検証のため10メートル法によって計測した電場データ(*)を可視化したものを図10に示します。

図10 擬似EUT10m法推測

図9と図10を比較すると、各成分の電場強度の強いところでおおよその分布が合っていることがわかります。 これは実際の電気機器のように複雑な電波を放射する電波源でも、ある程度正確に10メートル法の電場分布が 推測できていることを示しています。

次に、水平成分と垂直成分がそれぞれ最大となる場所でのハイトパターンを比較したものを図11に示します。 横軸が高さ方向の座標、縦軸は電場強度をデシベルで表しています。

図11 アンテナハイトパターン

(*)計測データのご提供:一般社団法人KEC関西電子工業振興センター様